公立中学校の教員 間杉慎太郎さん
大学生たちがインタビュー

中学校教員 間杉慎太郎先生へインタビュー

私たち栗芝・榮谷プロジェクトでは、「ふつうってなんだろう」をテーマに掲げ、仕事における”ふつう”にフォーカスしたインタビュー記事制作を行なっています。

今回は、現役の中学理科教員のインタビュー記事です!

インタビュイー間杉 慎太郎
職種中学校・理科教員
メモ公立中学の教師としてご活躍中の、間杉先生。多くの中学生の恩師となっており、今回のインタビューが教え子との再会の場となりました。教師への道をひたむきに走り続け、生徒と向き合い続ける姿を伺いました。
《ふつうってなんだろう》インタビュー
中学校教員のスケジュール
間杉慎太郎先生
間杉慎太郎 先生(インタビュー時撮影)

中学教員になったきっかけ

まず、どうして中学の先生になろうと思ったのですか?

 小学生のときから人に物を教えるのが好きでした。全部課題終わっちゃったから暇ですみたいな、よく何か授業で暇をもて余す人いますよね笑。当時そういうイケスカないタイプだったんだけど、他の人にガンガン教えに行って、その子が問題を解けたことに謎の喜びを覚えてました。
 でも、当時は体育科の教員になりたかったんですよ。スポーツ万能だったんだけど、小学校高学年から塾に入って、運動をやめてしまって…..。その後、中学2年生で理科の先生と出会いました。私とは反対のタイプで、すごい熱血で、情にもろい。当時の私は厨二病ちゅうにびょう真っ盛りだったんだけど、自分の逆を行く人っていうのに、どこかしらでやっぱ惹かれてたり、面白いと感じていたんですね。それで教えることが好きという自分とマッチしていることに気づいて。そこからは先生になることだけを考えていました。 
 大学でも、とにかく教員免許とって卒業しようという第1目標があって、それしかしてなかったですね。

教員になることだけが目標だったのですね!大学でも他の道を考えたことはなかったのですか?

 なかったですね….。でもそもそも大学行けなさそうみたいな瞬間があったんです。「理系だと進学できないよ」、と言われて。その頃音楽が好きだったから、音大行こうかなと思ったこともあったけど…。音大はピアノともう1個楽器ができないとダメで、全然できなかった。だからその道を諦めて高校のテストを頑張ることを優先しました笑

教員になっての新たな気付き

教室にはこんなものが
教室にはこんなものが

教職を始めてみて、何か気づきだったり、何かここは思ってたのとちょっと違ったなとかというところはありましたか。

 私は東京の足立区出身なんですが、だいたい「先生が階段でブチギレてる」みたいなところで教育実習をしていて、私の中の先生像はそれでした。だから採用試験のときのロールプレイでも、試験官の前で怒鳴り散らしたんですよ。そうしたら「あなたは本当にそれを現場でやるんですか」って言われました笑。それでも、この頃は「感情沸き立ってたらさらに上の力で制しなきゃ」みたいなことを考えていました。
 初めて担当したクラスは、元気な子たちが多いクラスで、日々私も元気に声を出してました。周りの先生から「あのクラス大変だよね」って言われ続けてたけど、あいつらかわいいじゃんって思って。気持ちのズレとかも、彼らと3年間付き合う中で、問題行動とか抱えきれない彼らの気持ちに気づいて。そこから、ただ怒鳴るのではなく、生徒に寄り添うスタイルになってきたのかなと思います。
(※ちなみにプロジェクトメンバー(投稿者)のまいまいは、先生が最初に担任したクラスでした。)

生徒には見えてないけど、実はこういうこともしてます」みたいなことはありますか?

 基本的には、多分見えてないことばかりだと思います。生徒は大体、「あの先生って何でそんな仕事しないの?」って平気で言いますからね。生徒達が「自分でできた」と思ってもらえるように、授業の下準備には莫大な時間がかかります。担任だとさらに大変です。しかも生徒って、現実以上に担任っていう存在に、何か期待しているところがあると個人的には感じていて。でも中学生って別にね、冷静に考えたら担任と接する時間なんてそんなにないはずですよね笑。でも担任と、授業やってるだけの先生だと、期待感という意味でも、生徒との距離感が全然違うと思います。

先生は担任をされた際、個人ノート(※)をやっていたと伺いました。毎日されていて大変だったと思うのですが、どうして始められたんですか?

 1人で時間があったからかな。あとは生徒とのコミュニケーションをとりたかったから。休み時間に、子供たちがある程度グループを作ってわちゃわちゃしてるところに先生は絶対いけないんですよ。なんなら、その中の1人に用事があっても、その中になかなか行けない。2人で話してるところとかももちろん。だから個人ノートで1人1人と向き合いたいと思って始めました。

思い出の個人ノート
思い出の個人ノート

(※個人ノート…先生と生徒の一対一の交換日記みたいなもの。1人1人ちっちゃいノートが配られて、そこに生徒が今日こんなことしたみたいなことに対して、先生から返信が来る。なんと手書きで書いていたそう!)

たくさんの生徒さんと関わる中で今まで印象に残っている人はいますか?

 すごい子は中学生の時点でもうすでにやりたいことが定まっているし、その上で何か吸収しようとしているからすごいですよね。自分自体は落ちこぼれで、高校でもスレスレを歩んでたから、自分の中で変なプライドがないんですね。だから、中学生でもすごい尊敬します。
 ただ、逆に問題性のある子っていうのもすごい手がかかる反面、一緒にいる時間が長くなってくると、わかり合えてくることも多くて。
 そう言うと、実は普通の子ってすごい少ないんですよ。1人1人やっぱり違うから、みんな覚えちゃうことが多いですね。

生徒、保護者との関わりでは

シクラメン
生徒とともに育てているシクラメン

理科を教えるときとか、何か意識していることはありますか?

 大切にしていることは、自分の時間をとにかく減らすっていうことですね。子供の立場からしたら、先生が喋り倒してる授業ほど暇なものはないだろうなと思っています。わかったよね、と言っていても、本当は理解してないかもしれません。だから、今はスライドで授業しているんですけど、喋るのは15分ぐらいにして、生徒の活動を入れるようにしています。わからないとアンケートで書いてくれた人には、個別に聞きに行くようにしてますけどね。

なるほど!生徒にまず考えてもらうところが重要なのですね。授業以外で大切にされていることはどうでしょうか?

 イライラしないことかな笑。日常でイライラするポイントって色々あると思うんだけど、寛容になると、あまりイライラしなくなります。ずっと子供のことを考えているからかもしれません。

親御さんとの関わりはどうでしょう。

 昔は保護者っていう存在がすごい怖かったんです。私よりも人生経験豊かだと思うし、そんなぺーぺーの先生とかに言いたくないだろうし。
でも親御さんが悩みを持っていれば、年関係なく先生として、こちらをプロとして話してくれることに気づきました。なので、協力しあえる関係、もう親御さんの良き相談相手…くらいのポジションで、三者面談できるようになればいいのかなと思っています。

間杉先生が心掛けていること

教室のキャラ
先生の書く顔は山田と呼ばれているそうです

中学以降、進路に迷う生徒もいると思いますが、どのようにアドバイスしていますか?

 アドバイスはしてないですね….。ただ、生徒の話をよく聞くようにしています。
 先生は喋りたい人が多い職業だと思ってますが、だからこそ聞く人間になっています。なぜかというと、自分は情報が発信できないからです。ずっと先生しか目指してなかったわけだし、世の中の何かを知ってるわけでもないので。傾聴をして、良き相談相手になることを意識しています。

聞くことを大事にしてらっしゃるのですね! 先ほどお聞きした指導法とかなり変わったと思いますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

 最初の頃は、使い分けだと思ってました。強い指導と寄り添う指導は完全に別だと思ってて、やっぱ問題を起こすような子には強い指導で、そうではない子は寄り添うのだと思っていたのだけど…そうじゃないなと気付かせてくれたのが、最初に関わった子供達かな。問題のある子達も、裏を返せばすごいエネルギーを持っているから、ちゃんと導いてあげればきちんと回るようになるんですよね。それを気付かせてくれた子供達には、感謝しかないですね。

間杉先生の「ふつう」とは

「ふつう」という言葉を聞いて感じることは何かありますか?

でも、普通を作ってるのは一体誰なんだと、すごい思います。常識とか当たり前っていう言葉が、多分普通を指してるんじゃないかなとは思っていて。でもそれぞれの意味を普通としないと、世界が回らない。それ知らないのは当たり前じゃんっていうことで、自分を守ることもできる。全てが普通の人は絶対ないから、そこをお互いのふつうを持ち寄って補完していくものなのかな。

なるほど。学校ではお互いのふつうがわからないことが多いから、衝突が起こることもあると思います。先生として意識していることはありますか?

 まず、衝突することを対処できる力が育てれば十分です。衝突が起きないようにお友達になりましょうみたいなのは、気持ち悪いかもしれません。衝突が起きるのを避け続けるのが良いかって言われたら、そうでもない。年齢を重ねるごとにそれは大変になってしまうので、必要なときには衝突していていいと思います。致命傷になってしまうのは、当然ちゃんと対応しなきゃですが…。
 その中で、衝突した後のことをきちんと伝えてあげることが大事だと思っています。何か目的を遂行するために、それぞれの自分の役割ができることをやることが大切なんだよっていうのは、伝えていきたいですね。

お忙しい中、ご協力いただきありがとうございました。

教え子との再会
教え子との再会

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